宿屋ぼぼ つづき4

客「あ、そうかい。じゃ、ちょいと行って來らア」
亭「ヘエ、行ってらっしゃい。あ、右ですぜ。左ィ行くと落っこちるから・・・」
トントントントーンと二階へ上がって行きまして、半刻もすると、トコトコ、トコン、トコン・・・降りて來る。
亭「いよッ、旦那ァ・・・おたのしみ。どうです。よかったでやしょう?」
客「(ため息)何ヲ言ってやンでえ。おう、おやッさん、何がオボコ娘だよ、あれが・・・えッ、何が新鉢でえ!」
亭「へッ、ど、どうしたんで?」
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客「羽織の手ざわりも何もありゃしねえや。部屋へはいると、いきなりしがみついて来て、鼻息を荒くしてよ・・・」
亭「はてネ?」
客「下ァ大ほころびが切れてやがって、たちまち、グショグショになりやがって・・・」
亭「へーえ?」
客「腰ァ使う、茶臼ァつく、おまけに、おれが一ぺん行くうちに、三べんも行きゃァがった。あれがオボコ娘たァすさまじい、金ェ返せ」
亭「おかしいナ、そんなはずァねえんだがナ。廊下のつきあたりの・・・左ィかわの部屋にへえったんでしょうナ」
客「なンだかしらねえが、おめえが右々とさわぐもんだから、右ッ側の部屋に入った」
亭「えッ、右ッかわ?し、しまったあ!」
客「ど、どうしたんでえ?」
亭「そ、そりゃァ・・・あたしの、女房です・・・・」
定本艶笑落語3 小島貞二編 噺家(橘家圓太郎)
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最終更新日:2018/08/12