道鏡 続つづき

さて、ところがいよいよこれが都へのぼるということになりまして、それまではよほど間口が広かったんでございますナ、
道鏡が出るまで牛蒡(ごぼう)洗うよう
どんな方がお相手をしても思いが至らなんだ。今度こそはというわけで、道鏡が控えておりますところ、御簾(みす)の向こうからやんごとなきお方が、声をおかけになろうという段どり。
氏なくして道鏡玉の腹に乗り
とも申しますナ。”氏なくして乗る玉の輿”てなことを申しますが、玉の輿やないんですナ。
氏なくして道鏡玉の腹に乗り うまいことしよったもんですナ。
えー、さて、はじめてのおめみえということになりますと、しかし最初から、「さァ、どうぞこっちへ」、「へえ、あんたに逢いたかったんです」「どうぞお乗り」と、そうはいきません。やんごとなきお方でございますから、御簾を隔てまして道鏡が控える。
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「弓削道鏡とはそのほうか」
とお声がかかる。うるわしい声やったそうですナ。
「苦しゅうない、面(おもて)をあげい。・・・いや、そのほうの面ではない。もうひとつほうの面もあげてみせい」
「はッ、なれど・・・」
「苦しゅうない、あげてみせい」
もうこのときには道鏡、自分のモノを持て余すぐらいに大きィなってたんですナ。ですからモノをお腹のほうへひっつけまして、その上から帯で結んで誤魔化してたというぐらいのもんで、膝が三つになってはさすがに申しわけないと思うたんでしょう。
「では恐れながら・・・」
するするするッと帯をほどきまして、前をくつろげる。咽喉のあたりまでこようかというやつが隆々りゅうーッと天を目ざしていなないていたと申します。いななくというと馬のようですが、いや、馬がお辞儀をするというぐらいのやつが、高く天を目ざしてそびえ立っております。
たいがい、やんごとなきお方の前でございますと、もう、ちィーそうなるもんですが、えー、大体においてびくっとしただけでも縮みあがるというぐらいのもんですから・・・・。これがもう袋を供に連れまして天を目ざしていなないている。
あそこも太いが、肝も太いという、男は道鏡(度胸)でございます。
笑い話 艶笑落語 『松茸1』 につづく
公開日:
最終更新日:2018/08/12