そのはず

若い、美しい娘と、ハンサムな農家の青年が山道を歩いていた。
青年は大きな桶を背負い、片手に鶏を抱え、別の手に杖と、一匹の山羊をつないだ縄をもって歩いている。
二人は、薄暗い森の小道にはいった。
娘が言った。
「こんな所を、あなたと歩くのこわいわ。あなたは、あたしにキスするかもしれないんだもの」
純朴そうな青年が、苦笑した。
「どうして、ぼくがキスなどできるんだい?両手がふさがっているし、背中には、桶をかついでいるしさ」

「できるわよ。その桶をさかさまに下へおろして、鶏を中に入れちゃうのよ。それから、山羊は、杖にゆわえつけて、逃げないようになさいよ。ね、そうでしょう?」
アメリカ小咄
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馬子
師走大根を背負った馬、たびたび小便をすると、馬子、ことのほか心せき、「こん畜生めは、よくたびたび小便して、日の短いに待たせおるわえ。ちっと歩きながらしやァがれ」と言えば、
馬「ばかな、馬子じゃあるまいし」
江戸小咄
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公開日:
最終更新日:2018/08/12