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誤解

kobanasi  
       

 
 「おや、そこに行くのはジョセフ君じゃないか。どうしたんだ。蜂にでも刺されたのかね。まるで、二タ目と見られた顔じゃないぞ!」

 「やあ、ジャックか、いやはや、どうも、ひどい目にあったところさ。トムのやつに殺されそこなったよ」

 「ええっ?トムにだって?人ちがいじゃないのか?だって、トムときみとは無二の親友のはずじゃないか」

 「うん、その無二の親友が仇(あだ)になったのさ」
 「はて、それはまた、どうして?」

 「うん、まあ、きいてくれ。じつは今日の午後、トムのうちへ遊びに行ったんだ。ところが、トムのやつ、外出していてね、細君がるす番さ。で、すぐ帰るもの、と思って、細君といろいろ世話話をして時間をつぶし、さて帰ろうと立ちあがったらね、ズボンの前のボタンが、ポロリとおちちゃったのさ」



 「そんなことは、だれにもあるさ。でも、トムのうちでよかったね」
 「うん、トムの細君も、そんなことをいってたっけ。うちでようございましたわね。よそでしたら、とんだ恥をおかきになるところでしたってね。だが、かえっていけなかったのさ」

 「どうして?」
 「細君、さっそく、すぐつけてあげましょう、といってね。ズボンをはいたまま、ボタンをつけるぐらいわけはありませんというんだ。そのままでいいのよ、とね。そうしてトムの細君が、手早くボタンをつけてくれたものさ」usa2s
 
 「よかったじゃないか」
 「しまいまできけよ。ボタンをぬいつけて、最後に糸を切らなくっちゃならない。細君、いつものくせで、その糸をハサミをつかわず、糸切り歯で切ろうとしたのさ。と、そのとき、とつぜん、トムのやつ帰ってきたんだ。・・・それで、おれは、こんな顔にされてしまったのさ」

西洋風流小咄集 より

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公開日:
最終更新日:2014/06/06

 
  •  制作者 seiwa
     年齢  じじ
     住処  埼玉県
     仕事  話し方教室講師
     

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