倦怠期

彼女は受話器をとりあげた。
「ああ、あなたね、こちらは大丈夫。お急ぎにならないでいいわ。せいぜいおたのしみになっていらっしゃい」
電話を置くと、ベッドに寝ていた男が、彼女を愛撫しながらいった。「今の電話はだれだい?」「ウチの人よ」
「なんていってたんだい?」
「今晩おそくなるんですって・・・。いま、あなたのうちで、あなたとポーカーをやってるそうよ」
「アンナ!会いたいよ。今、いってもいい?」
「でも・・・」
「でもって・・・いけないの?今、きみ、なにしてるの?」
「いえないわ、恥ずかしいの・・・」
「いえないって?恥ずかしいって・・・ほんとに、なにしてるのさ」
「かいてるのよ」
「ええっ?かいてるって?そうして、恥ずかしいって?」
「ええ、一人でつまらないから、かいてたの・・・手がベトベトになってしまったわ」
おどろいたマリウス君、
「いけないよ、きみ、一人で、そんな・・・そんなこと・・・しちゃいけないよ。ぼく、今、すぐいく・・・」
「だめよ、恥ずかしいんですもの・・・」
ガチャンと電話を切って、大いそぎでアンナの部屋へとんでいってみると、なるほど、電話のとおり、アンナは、手をベトベトにしていた。一人で油絵をかいていたので・・・・。
「ああ、あなたね、こちらは大丈夫。お急ぎにならないでいいわ。せいぜいおたのしみになっていらっしゃい」
電話を置くと、ベッドに寝ていた男が、彼女を愛撫しながらいった。「今の電話はだれだい?」「ウチの人よ」
「なんていってたんだい?」
「今晩おそくなるんですって・・・。いま、あなたのうちで、あなたとポーカーをやってるそうよ」
西洋風流小咄集 より
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かいてる!
ふと、かわいい女友だちアンナのことを思い出し、やもたてもたまらず、電話をした。「アンナ!会いたいよ。今、いってもいい?」

「でもって・・・いけないの?今、きみ、なにしてるの?」
「いえないわ、恥ずかしいの・・・」
「いえないって?恥ずかしいって・・・ほんとに、なにしてるのさ」
「かいてるのよ」
「ええっ?かいてるって?そうして、恥ずかしいって?」
「ええ、一人でつまらないから、かいてたの・・・手がベトベトになってしまったわ」
おどろいたマリウス君、
「いけないよ、きみ、一人で、そんな・・・そんなこと・・・しちゃいけないよ。ぼく、今、すぐいく・・・」
「だめよ、恥ずかしいんですもの・・・」
ガチャンと電話を切って、大いそぎでアンナの部屋へとんでいってみると、なるほど、電話のとおり、アンナは、手をベトベトにしていた。一人で油絵をかいていたので・・・・。
西洋風流小咄集 より
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公開日:
最終更新日:2018/08/12