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ハンカチ



kobanasi  
 一等車の中はガランとしていて、りっぱな紳士が二人、向きあっています。一方の紳士、さっきから、鼻にハンカチを当てがって、くしゃみが出そうなのを、がまんしているようなようすです。

 「もしもし、どうかなさいましたか。くしゃみをこらえておいでのようですが、ご遠慮なく。カゼ薬でしたら持ちあわせがありますから」 すると、相手の紳士はにっこりして、

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 「いや、とんだおさわがせをいたしました。カゼでも、くしゃみでも、なんでもないのです。じつは・・・もうしにくいのですが、私は愛する妻のそばを、一時でもはなれているのが、身を切られるようでしてね。旅行のときには、こうやって、せめても、愛する妻の移り香のあるハンカチを手ばなさず、妻が恋しくなると、出しては、匂いをかいでいるのです。みょうなやつとお笑いくださいますな。妻がどんなにすてきな女か、失礼ですが、ちょっとこのハンカチをかいでみてごらんなさい」

hankati と、紳士は、相手の鼻さきに、手にしたハンカチを突きつけました。そのとき、相手は思わず、叫んでしまいました。

 「あッ!じゃ、あなたはガスパールさんですな・・・・・」

西洋風流小咄集 より




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公開日:
最終更新日:2018/08/12


  •  制作者 seiwa
     年齢  じじ
     住処  埼玉県
     仕事  話し方教室講師
     

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