道鏡 つづき

これが年ごろになりますと、
道鏡は座ると膝が三つ出来
てなことを申します。まァ正座いたしますと膝が三つあるように見えたちゅンですさかいに大変なもんで、いかに大きかったか。
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道鏡の幼名たしか馬之助
てな川柳があるぐらいのもんですさかい、馬なみの持主やったんですナ。
それからお風呂へ入るときはえらいこっちゃったそうですな。普通まァ誰でもお風呂へ入りますときには、右足なり左足なりからお風呂へつけます。
ドボン・・・ドボン・・・(小さく)ポチャンと、これがたいがい風呂へ入る音。え?
いえ、足が一本ずつね、ドボン・・・ドボン・・・と入って、まん中の足がジャポンと、こう言いまンねんナ。
ところがあんた、弓削道鏡はそやなかったそうですナ。(小さく)、ドボン・・・ドボン・・・(大きく)ドッブーンと、こう言うたちゅンですさかいに、ハッハハハハ、恐ろしい噺があったもんで・・・・。
また、この道鏡が体を洗うとりますときに、
「おい、おい、おいッ」呼ばれたんで
「なんやァ?」ちゅうてひょっと立とうとしたら、おのれのもんをおのれで踏んでこけたちゅンですさかい、 「痛いッ」
大騒ぎでございますが、よほど大きかったとみえますナ。
ところが年ごろになりますと、この道鏡の相手をするご婦人がない。たまに町へ出ましてお女郎買いに行きましても、相手をするやつがみないやがって逃げてしまう。
「あァ、世の中にわしぐらい、はかない人間はない。遂に一生を、女のひとというものを知らんと死んでしまうのンかしら」
嘆き悲しんでおりますと、あァ神さんというものはうまいことこしらえてくれはるもんですナ。時のやんごとなきお方が、これが大変に間口の広いものをお持ちやったそうで、どういう人がお相手をいたしましてもご満足あそばされるということがない。
えー、これまた嘆き悲しんでおりますところへ、道鏡という非常に巨大なモノを持った男がいるということが、都へ聞こえまして、どこからともなくお耳に入って、「その者を召しだすように」ということで勅使が下がりました。弓削村へたずねてまいりまして、道鏡の家を訪れた。
「こちらが道鏡殿のお宅でござるか」
「へへーッ」
「うむ。恐れ多くも畏(かしこ)きあたりよりの勅(みことのり)によって、麻呂が検分にまいった」
マロが来たんですナ、これが・・・・で、このマロが来て、”ロー”やなしに”ラー”のほうを調べたというんですからナ、そらァおもしろいもんができあがったでしょう。
天が下二本はないと勅使ほめ
と申しますから、いやァ、「天下広しといえどもこれほどのものは二つとござるまい。麻呂も満足に思うどよ」
天が下二本はないと勅使ほめ
ということがございます。
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公開日:
最終更新日:2018/08/12