宿屋ぼぼ つづき1

えー、これは、昔の宿屋でございますが、今で申します・・・あいまい宿、いかがわしい営業をしている宿屋の一つでございます。
宿の亭主というのが、エ、田舎から出て来たばかりという家出娘を専門に狙って、えー、けしからん稼ぎをしている。親切ごかしにだまして、自分の宿へ連れこんで、えー、泊めまして、ムリヤリに、この・・・客をとらせるんですナ。
亭主「おいおい、ねえちゃん、ねえちゃん・・・ええ、おう、そこ通るねえちゃん!」
娘「へ、へえ、おらですだか?」
亭「あァ、その”おら”だ・・・ウン。どうしたね、え、見れば、藁草履(わらぞうり)をひきずって、おうおう、ほこりまみれになって、ずいぶんクタびれてる様子だ。どっから来たね」
娘「ヘエ、安孫子の在から、夜通し歩いて来ましただ・・・」
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亭「いやア、そりゃたいへんだ。で、どこへ行きなさる?」
娘「行くアテはねえだ。どっか奉公サしてえと思ってるだ・・・」
亭「うーん、そいつア危ねえ話だなア。江戸てェところは、生き馬の目ェ抜くってェくれえなもんだからナ」
娘「エ、あンですだと?」
亭「生きた馬の目の玉ァ抜くんだよ」
娘「ハレ、馬の目玉ァ抜いてどうするだ、つくだ煮にでもするのけエ?」
亭「なに、馬だからつくだ煮にゃしやしねえ、ウマ煮にして・・・あ、いやいや、そんなくだらない話をしてるんではない・・・。な、西も東もわからねえで、ましておめえさんのようなきれいなねえちゃんが、マゴマゴしてると、悪いやつにブツかったら、とんだ目に会う。奉公口なら、どうだ・・・。私が世話してもいいんだぜ・・・」
笑い話 艶笑落語 『宿屋ぼぼ つづき2』 つづく
定本艶笑落語3 小島貞二編 噺家(橘家圓太郎)
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最終更新日:2018/08/12