氷煮

「お親父様、寒いはずでございます。このように氷が張りました」
「どれどれ、ほんに厚く張ったな、寒中の氷は薬になるというからひとかけら喰ってみよう」
「さあ、こう堅く氷っていては、とても歯が立ちますまい」
「そんなに堅いか、それなら煮て食おう」
小ばなし歳時記 加太こうじより
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冬の小便
雪の夜なかに小便がしたくて目をさまして起きて立つ、厠が遠いので面どうだから廊下からしようと、雨戸をあけようとしたが氷りついてあかない。仕方なければ、かがんで敷居へ小便をたれかけ、氷をとかして、「しめた」とガラリと雨戸をあけてみたが、さてなんの用もない。
小ばなし歳時記 加太こうじより
裸まいり
いまはすたれたが、かっては大寒という季節の区切りにはいると、神社仏閣に寒さをおかしてもうでる人が多かった。寒まいりというのだが、特に薄着をしていけばご利益があらかたで、裸まいりは、もっともよろしいとされていた。若い衆が集まって話をしているところへ、仲間のひとりがかけつけてきて
「いま珍しいものを見た」
「なんだい半さん、珍しいものってのは」
「十八、九の女の裸まいりよ、からだの白いこと雪のようで、小股のきれあがったいい女だが、素っ裸で腰巻もしていなかった」
「ふーん、それで、きりょうのほうはどうだ」
「へへへ、顔は見なかった」
小ばなし歳時記 加太こうじより
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公開日:
最終更新日:2018/08/12