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毛の縁




kobanasi
 マルセイユからニースへ行く汽車の中で、オリーブとマリウスは、ぐうぜん向かいあいの席についた。二人は一面識もないのだが、車中のつれづれに話しはじめた。

 ふたりとも人なつっこい南国人のこととて、すぐ仲よしになって、めいめいの細君のことなど打ちあけてしゃべりだした。

 マリウスが言った。
 「ぼくは旅行に出るときには、いつも家内の・・・ほら・・・あそこの毛を二、三本抜いて、封筒へ入れて持ってくるんですよ。そして、退屈すると、こうしてポケットから出しては、においをかぐんです」isl1  

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 「へええ、そりゃ思いつきですね。ちょっとぼくにもかがしてくれませんか」
 「おやすいご用です」

 というわけで、オリーブは、マリウスから封筒をかりて鼻へ押しつけたが、急に、マリウスの両手をとって叫んだ。

 「あなたはマリウスさんじゃありませんか」
 「これはまた、よくご存知ですね」

 「いや、それはもう、かねがねおうわさは奥さんからうかがっておりましたが、お知り合いになれてうれしいですよ・・・」

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公開日:
最終更新日:2018/08/12


  •  制作者 seiwa
     年齢  じじ
     住処  埼玉県
     仕事  話し方教室講師
     

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