毛の縁

マルセイユからニースへ行く汽車の中で、オリーブとマリウスは、ぐうぜん向かいあいの席についた。二人は一面識もないのだが、車中のつれづれに話しはじめた。
ふたりとも人なつっこい南国人のこととて、すぐ仲よしになって、めいめいの細君のことなど打ちあけてしゃべりだした。
マリウスが言った。
「ぼくは旅行に出るときには、いつも家内の・・・ほら・・・あそこの毛を二、三本抜いて、封筒へ入れて持ってくるんですよ。そして、退屈すると、こうしてポケットから出しては、においをかぐんです」
「へええ、そりゃ思いつきですね。ちょっとぼくにもかがしてくれませんか」
「おやすいご用です」
というわけで、オリーブは、マリウスから封筒をかりて鼻へ押しつけたが、急に、マリウスの両手をとって叫んだ。
「あなたはマリウスさんじゃありませんか」
「これはまた、よくご存知ですね」
「いや、それはもう、かねがねおうわさは奥さんからうかがっておりましたが、お知り合いになれてうれしいですよ・・・」
ふたりとも人なつっこい南国人のこととて、すぐ仲よしになって、めいめいの細君のことなど打ちあけてしゃべりだした。
マリウスが言った。
「ぼくは旅行に出るときには、いつも家内の・・・ほら・・・あそこの毛を二、三本抜いて、封筒へ入れて持ってくるんですよ。そして、退屈すると、こうしてポケットから出しては、においをかぐんです」

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「へええ、そりゃ思いつきですね。ちょっとぼくにもかがしてくれませんか」
「おやすいご用です」
というわけで、オリーブは、マリウスから封筒をかりて鼻へ押しつけたが、急に、マリウスの両手をとって叫んだ。
「あなたはマリウスさんじゃありませんか」
「これはまた、よくご存知ですね」
「いや、それはもう、かねがねおうわさは奥さんからうかがっておりましたが、お知り合いになれてうれしいですよ・・・」
仏小咄
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公開日:
最終更新日:2018/08/12