かぎわけ

トムさんは、シェパードが、大のご自慢です。
ある朝、五匹ほどつれて、近くの小道を歩いていると、向こうから顔見知りの伯爵がやってきたので、挨拶しました。
「ほほう、これが、あの有名なトロンペット君なのですか?」
と、伯爵は一匹の頭をなでながら、いいました。
「だが、とくにこの犬だけが、すぐれているようには見えませんなあ。どうでしょう。わたしは賭けますよ。じつは、居間に手袋を忘れてきたんですがね。トロンペット君、それをとってきますかね?まさか、それまでは、やれますまい」
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トロンペットは、たちまちいなくなりましたが、やがて、尾をふりふり、得々としてもどってきました。
「おや、ずいぶんダブダブの手袋だな」
と、思って、よく見ると、それは伯爵夫人のパンティでした。
西洋風流小咄集 より
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最終更新日:2018/08/12