贖罪(しょくざい)

シャノン君は、神さまの前に、罪を告白して、ゆるしをねがいました。畠の中で、若い女を見かけたので、妙な気持ちになり、押したおして、手ごめにしようとしたが、アワヤというところで、シャノン君は思いとどまり、その行為は未遂におわったのです。
告白をききおわった神父さんは、厳粛な顔つきでいいました。
「あなたの行為は、まことに罪深いものですぞ。たとえ、あなたが、縁(ふち)にさわっただけだったとしても、もう、それは入れたと同じこと、と申してよろしい。そのつもりで、かたくかたく、贖罪を誓わなければなりませんぞ」と、きついおとがめでした。
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それから、一週間の後、日曜日のミサ(教会の祭式)がありました。神父さんが、浄財の喜捨を受けるために、鉢を持って信者のあいだを歩きまわり、やがて、シャノン君のところへも、やって来ました。
シャノン君は、ポケットから、2フランのお金をとり出すと、神父さんの持っている鉢の縁をゆっくりとなでてから、そのまま、お金はじぶんのポケットへ戻して、おもむろにいわく、
「神父さま、縁をなでれば、中へ入れたも同様でございます。アーメン」
西洋風流小咄集 より
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公開日:
最終更新日:2018/08/12