ブラシ工場

ブラシ工場にかよっている女工さん、ある日、ふと気がつくと、なにやら生えそろっているので、びっくり仰天、いかにも毛をうえるのが仕事とはいえ、こんなことになるとはなさけない、どうしたらいいかしらと、思いあまって母親にうったえた。
「あたし、もう、あの工場なんかいかないわ」
「なぜ?」
と、きかれて、わけを話すと、
「おバカさんだことね・・・お母さんにだってほら・・・」
と、さとしたが、なっとくせず、
「ああ、お気の毒なお母さん、あたしのおかげで、お母さんまでが・・・」
と、さめざめ悲しみなげくのだった。
これには、すっかり手をやいた母親、この上は、と、社長さんのところにつれていった。
話をきいた社長さん、苦笑して、
「わたしだって、ほれ、このとおりだ!」
と教えれば、
「さすがは、ブラシ工場の社長さんだけあって、柄(え)までついてるわ!」
「あたし、もう、あの工場なんかいかないわ」
「なぜ?」
と、きかれて、わけを話すと、
「おバカさんだことね・・・お母さんにだってほら・・・」
と、さとしたが、なっとくせず、
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「ああ、お気の毒なお母さん、あたしのおかげで、お母さんまでが・・・」
と、さめざめ悲しみなげくのだった。
これには、すっかり手をやいた母親、この上は、と、社長さんのところにつれていった。
話をきいた社長さん、苦笑して、
「わたしだって、ほれ、このとおりだ!」
と教えれば、
「さすがは、ブラシ工場の社長さんだけあって、柄(え)までついてるわ!」
西洋風流小咄集 より
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公開日:
最終更新日:2018/08/12