自分はバケモノ?

箱入り娘のマルトが、しんこくな顔をして、母親といっしょに展覧会から出てきた。
彼女は一流の大家巨匠の作品である、この世のもっとも美しい女たちを見たのだった。
その女たちは一糸まとわず、きわめてあざやかに描かれていた。明るい肌の下の青い静脈を指さきでたどることもできたし、また、歯や髪の巻毛や唇のうえの影を数えることもできるくらいだった。だが、すべての女になにかが欠けていた!
マルトは浮かない顔でお休みなさいを言い、夕食もとらずに自分の部屋に引きとった。わくわくしながら服をぬいだ。明るい、冷やかな姿見が、真っ白な、全身をうつしだした。
純潔なマルトは、早くも小草の萌えそめた下腹の小道や、鳥の巣のような脇の下のくぼみをのぞく勇気すらない。
そして、涙声でつぶやいた。
・・・・・すべての女たちのうちで、わたしだけがバケモノになるのでしょうか!
彼女は一流の大家巨匠の作品である、この世のもっとも美しい女たちを見たのだった。
その女たちは一糸まとわず、きわめてあざやかに描かれていた。明るい肌の下の青い静脈を指さきでたどることもできたし、また、歯や髪の巻毛や唇のうえの影を数えることもできるくらいだった。だが、すべての女になにかが欠けていた!
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純潔なマルトは、早くも小草の萌えそめた下腹の小道や、鳥の巣のような脇の下のくぼみをのぞく勇気すらない。
そして、涙声でつぶやいた。
・・・・・すべての女たちのうちで、わたしだけがバケモノになるのでしょうか!
西洋風流小咄集 より
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公開日:
最終更新日:2018/08/12