大鼻
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ポーマルシャン家の箱入り娘、マドレーヌと、シャンフォール家の秘蔵息子、ジルベールの婚約が発表された。
両家とも由緒ある家柄、巨万の富ということもあって、いや、ものすごい評判となった。当人たちよりも、両家の親たちの方が、まるで夢中になっているありさま。
ところで、マドレーヌの母親は、人一倍の苦労性、どんなことがあったのか、近ごろ、バカにしずんでいるようす、夫が心配して、
「どうした、おまえ。バカにうかない顔をしているが?」
すると、夫人は、ちょっと顔を赤らめて、
「あなた、ジルベールさんの鼻をごらんなって?」
「そりゃ、見たよ。それが、いったいどうしたんだね」
「人並みはずれて、大きいとお思いにならない?」
「そういえば、そうだな。でも、なかなか立派なもんだ」
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「なんです、しらばっくれて・・・。大鼻の女房殺しっていうではありませんか」
「ふふっ、そんなことか。マドレーヌは、おまえの娘だ。なんとか、持ちこたえるよ」
「じょうだんじゃありませんよ。あたしは、それが心配で、夜もねむれないのです。それで、あたし、しらべてみようと思うのです」
「おまえがか、バカなっ!」
「あたしじゃありませんわ。女中のマリーにやらせるのです。忠義者ですから、一晩、いいふくめて、ためさせてみようと思うの」
マリーは、夫人に、たのまれると、しばらくためらっていたが、やっと承知した。
翌朝、マリーは、はればれとした顔で、帰ってきた。
「奥さま、ご安心ください。ご心配は、ご無用でございます」
「まあ、ほんとうかい、マリー。よかった!」
「はい。お鼻ほどはございません。ちょうど、家の旦那さまと、おなじくらいでございます」
両家とも由緒ある家柄、巨万の富ということもあって、いや、ものすごい評判となった。当人たちよりも、両家の親たちの方が、まるで夢中になっているありさま。
ところで、マドレーヌの母親は、人一倍の苦労性、どんなことがあったのか、近ごろ、バカにしずんでいるようす、夫が心配して、
「どうした、おまえ。バカにうかない顔をしているが?」
すると、夫人は、ちょっと顔を赤らめて、
「あなた、ジルベールさんの鼻をごらんなって?」
「そりゃ、見たよ。それが、いったいどうしたんだね」
「人並みはずれて、大きいとお思いにならない?」
「そういえば、そうだな。でも、なかなか立派なもんだ」
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「ふふっ、そんなことか。マドレーヌは、おまえの娘だ。なんとか、持ちこたえるよ」
「じょうだんじゃありませんよ。あたしは、それが心配で、夜もねむれないのです。それで、あたし、しらべてみようと思うのです」

「あたしじゃありませんわ。女中のマリーにやらせるのです。忠義者ですから、一晩、いいふくめて、ためさせてみようと思うの」
マリーは、夫人に、たのまれると、しばらくためらっていたが、やっと承知した。
翌朝、マリーは、はればれとした顔で、帰ってきた。
「奥さま、ご安心ください。ご心配は、ご無用でございます」
「まあ、ほんとうかい、マリー。よかった!」
「はい。お鼻ほどはございません。ちょうど、家の旦那さまと、おなじくらいでございます」
西洋風流小咄集 より
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